スポーツサイクルを買おうと思っているビギナーが、ショップやすでに自転車に乗っている人に、どんな自転車を買えば良いか相談をすると、往々にして「クロスバイク」という返事が返ってくるかと思います。
クロスバイクとは、マウンテンバイク(MTB)のタフさとロードバイクの速さの中間を狙ったジャンルであり、趣味と実用を兼ねてスポーツサイクルを始めるには、確かにうってつけの存在です。
ところが、その「クロスバイク」にも実にいろいろあって、何がどう違うのか、何を選んだら良いのかわからない……ということになってしまうのです。今はそれだけ、たくさんの種類のクロスバイクが販売されているのです。
そこで今回は、初心者の方のために、クロスバイクの「性格」の見分け方、選び方を紹介したいと思います。
■クロスバイクの種類
クロスバイクの中にも、さらにいろいろな種類があります。わかりやすい範囲で、分けてみましょう。
「クロスバイクの王道系」
ここではあえて「王道系」という表現をしましたが、つまり「昔からあるクロスバイクって、こうだよね!」「いかにも、クロスバイク!」といった感じのものです。例をあげるとすれば、これ。
GIANT SUITTO
比較的安価だけど、タフなフレーム、700Cというロードバイクと同じ径のホイール、だけど32C〜38Cとタイヤは太め。もっとも安価なクラスはサスペンションのないフロントフォーク、中級グレード以上はサスペンションのついたフォーク……といった構成です。
「クロスバイク 前サス無し」
王道系のクロスバイクでは、多くのモデルでフロントサスペンションが装備されています。しかし、サスペンションは乗り心地こそ良いものの、重量はかさみます。そこで、中級グレード以上でもリジッドフォークとして、軽快感を重視するものが増えてきました。今ではむしろ、このスタイルが「いかにも」という感じのクロスバイクと言えるでしょう。なのであえて細分化して名前をつけるほどでもないのですが、ここでは一応「クロスバイク 前サス無し」としておきます。
代表格はこちら。
TREK 7.3FX
「スピード系」
クロスバイクはMTBとロードバイクの良いとこどりだと言われますが、フレームがMTBをベースとしたものであることが多く、ロードバイクに比べればどうしても軽快感に劣ります。そこで「クロスバイクといえども、ロードバイクに近い軽快感を!」ということで、フレームを軽量化、ホイールベースを短縮して旋回性能を向上、そして700×28Cなど細めのタイヤを装備したものが出てきました。出始めは「スピードバイク」などと呼ばれていましたが、ここでは「スピード系クロスバイク」と分類します。
軽快感はかなりのものですが、その分、上記2つのジャンルに比べると安定感、ゆったり感といった面では劣ります。代表格はもちろんこれ。
GIANT ESCAPE R3.1
「アーバン系」
クロスバイクというと、どうも中途半端だったり、ものによってはちょっと「ダサい」イメージがないわけではありません。しかし昨今では、都市生活者をターゲットに、デザインを磨いたものも増えてきました。都会の男性を意識してダークグレーやブラックのフレームカラーが多いのが特徴です。構成、性能的には「クロスバイク 前サス無し」と同じものが大半ですが、個性的なルックスのものが多いのでジャンルとして分けてみました。
代表格はこれでしょう。
Cannondale BAD BOY
■ジオメトリーからクロスバイクの個性を読み取る
クロスバイクを「王道系/前サス無し/スピード系/アーバン系」と大ざっぱにタイプ分けしてみましたが、では各クロスバイクのタイプや個性をどう見分ければ良いのでしょうか。自転車の場合、気が済むまで試乗する……なんてことはできませんので、カタログに書かれていることがよりどころになります。
例えば、フロントサスペンションの有無は、写真を見ればわかりますよね。また、フェンダーやスタンドが最初から付いているモデルなら「日常での使い勝手を重視してるんだろうな」と想像がつきます。では、それ以外のことは?
見出しにもあるように「ジオメトリー(ディメンション)」に注目してみましょう。つまり、クロスバイクのフレームがどう設計されているか、ということです。
自転車のカタログにはジオメトリーチャートが乗っています。「フレームのここからここまでが○mm」といったことがわかります。具体的に、その人にとってどのサイズが最適かということは、一概には言えません。手足の長さや柔軟性によって異なるからです。また、どんなふうに使いたいかによっても、変わってきます。したがって「自転車のサイズ選び」については、自転車店の店員さんにちゃんと相談してください。
では、クロスバイクのキャラクターを見分けるという視点で、ジオメトリーのどこに注目するか。あまり細かく見ても余計に混乱するだけですから、とりあえず「チェーンステー長(リアセンター)」「ホイールベース」をチェックしてみてください。
GAINTのWebサイトに掲載されているジオメトリー図
チェーンステーやホイールベースが長いと、直進安定性に優れていて、コーナリングはゆったりした感じになります。逆に短ければ、コーナリングでの軽快感が出ますが、その分、直進安定性は劣ります(クロスバイクの場合“直進安定性が悪くなる”というほどのことでもありません)。そこに、標準で装着されているタイヤの太さを加味すれば、そのクロスバイクがどんなキャラクターなのかは、だいたい想像がつくわけです。
さてここで、GIANTのESCAPE R3.1と、TREK 7.3FXを比較してみます。どちらもフロントサスペンションのないクロスバイクです。多くの初心者にとっては、この両者「値段とカタチ以外どこが違うの?」と思わずにはいられません。
2012 Giant Bicycle [ESCAPE R3.1] -outline-
しかしジオメトリーを見ると、ESCAPE R3.1のチェーンステー長は各サイズとも425mm、7.3FXのチェーンステー長は各サイズとも445mmと、20mmの差があります。ホイールベースはサイズによって変わってきますが、ESCAPE R3.1は989.1〜1015mm、7.3FXは1057〜1065mmと、7.3FXのほうが圧倒的に長いことがわかります。
加えて、タイヤの太さ。ESCAPE R3.1は700×28C、7.3FXは700×32C。後者のほうが太いわけです。細いほうが軽快で、太いほうが乗り心地が良くなります。
つまり、軽快感重視ならESCAPE R3.1、安定感重視なら7.3FXということになります。このサイトでは、ESCAPE Rシリーズを「スピード系」に分類しています。クロスバイクの中でも有数の、軽快感を重視したモデルです。一方、TREK 7.3FXは安定感を持った、フロントサスペンションの無いクロスバイクの中でも「ど真ん中」と言えるようなモデルです。
そんなわけで乱暴にまとめますと、シティサイクルからの乗り換え、そしてシティサイクルの延長線上で、ゆったり乗りたいのならば、ホイールベースが長めでタイヤの太いモデルがおすすめです。スポーティで軽快感のあるクロスバイクが欲しいなら、タイヤが細めのものがおすすめです。
軽快感を好む人がこの2台を比べると、7.3FXはもっさりしてると感じるかもしれませんし、安定感を好む人が2台を比べると、ESCAPE R3.1はフラフラして落ち着かないと感じるかもしれません。これは良い悪いではなく、完全に好みの問題です。
もちろん、Web上で数字を見ているだけでは、あなたにとって最適な自転車を選ぶことはできません。「自転車ってどれも似たように見えて、結構違うんだ」ということをアタマに入れつつ、やはり自転車専門店で相談するのがいちばんです。たくさんの人と自転車を見てきたお店なら、最適なフィッティングを施してくれるでしょう。
